| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-164

コイ科魚類スゴモロコの移植集団における形態変化と集団遺伝学的特性

*柿岡諒, 小宮竹史, 渡辺勝敏(京都大・院・理)

人為的に生物を移植すると,その生物は本来の生息地と新たな生息地の間での環境の変化を経験する.このような生物は,短い期間の内に環境の変化に応答して形質の進化的変化を示す場合がある.これは,生物の適応進化を実際に観察できる系として有益である.

スゴモロコSqualidus chankaensis biwaeは琵琶湖とその周辺に生息する淡水魚だったが,移植によって分布域を大きく拡げた.広大な止水域である琵琶湖と移植先の河川や湖沼の間には魚類の生息環境として大きな違いがあると考えられるため,琵琶湖に由来する非在来集団は新たな環境に対して応答し,形態的な変化が生じたかもしれない.そのような形態変異のパターンを調べることにより,非在来集団がどのような変化を経験し,その変化がどのような適応的意義を持つのかについて明らかにすることが期待される.

非在来集団の形態変異と遺伝的集団構造を調べ,起源と比較するため,起源となった琵琶湖と人為移植による非在来分布域から標本を採集した.それらについて外部形態の測定を行い,各集団がどのような形態的特徴を示すのかを比較した.また合わせて遺伝的集団解析を行った.形態変異がどのように環境と対応しているのか,環境への適応的な形態変異は見られるのかについて集団構造の特徴をふまえて議論する.

日本生態学会