| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-180

島嶼系潮間帯における魚類群集の構造と多様性

*新垣誠司(琉大・理工),土屋誠(琉大・理)

琉球列島島嶼系における生物群集の構造決定と多様性創出メカニズムの解析を目的として、潮間帯に生息する貝類と魚類に着目した群集調査を琉球列島および日本列島でおこなった。本発表では、岩礁性タイドプールを利用する魚類群集の構造とパターンについて、場所間で比較・解析した結果を報告する。

調査は、2007年6月から8月に琉球列島8島15地点で実施した。各調査地点において約20個のタイドプール(<1m2)を選択し、プール内にいる魚類を全て採集し、種同定とサイズ測定をおこなった。また、琉球列島との比較対照として、2006年に調査した本州・九州の計4地点における目視観察データを利用した。

本州・九州では、地点平均6種、のべ15種を観察できたのに対し、琉球列島では、地点平均10種、のべ40種を記録することができた。また、本州・九州ではハゼ科が優占するのに対し、琉球列島ではハゼ科とともにイソギンポ科の優占度が高くなること、一カ所に数個体のみ出現する希少種の数が増えることがわかった。種数-面積の解析において、両対数軸にしたときの傾きは、本州・九州で0.45-0.29、琉球列島で0.51-0.1であった。琉球列島内のバラツキが大きく、種数の増加率に緯度クラインに沿った傾向は見られなかった。一方、同じ傾きでも切片は、八重山地方で大きくなる傾向が見られた。

琉球列島内の場所間に違いをもたらしている要因として、主に岩質の違いなどに起因したタイドプールの微地形的な特性が考えられた。すなわち、プール特性の違いが、水温などの物理的環境や生息場所の数と質の変化をとおして、魚類の空間利用パターンに影響していると考えた。まとめとして、(1)南に行くほど総種数が増加する傾向にあること、(2)多様な環境と利用様式の違う種が存在することが、琉球列島における魚類群集の多様性につながっていると考察した。

日本生態学会