| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-193

局所的資源制約は多種共存を促進する

向坂幸雄(茨城県立医療大),吉村仁(静岡大),中桐斉之(兵庫県立大),富樫辰也,宮崎龍雄(千葉大・海洋バイオ),泰中啓一(静岡大)

自然界ではある環境下に多くの種が共存している。特に、プランクトンや植物などでは高い種多様性が知られている。こういった多様性の仕組みを理解することは、生物多様性の保全を考える上でも極めて重要である。従来の研究では、空間構造が共存を促進することはないとされてきた。演者らはこれまでに、空間内の生物に移動制約を導入する局所的相互作用系が、移動制約の無い大域的相互作用系に比べ共存を促進することを見出した。本研究では、局所的相互作用条件下で、種特異的な資源制約を想定した集中分布時だけに作用する種内競争を導入することにより、共存にどのような影響を与えるかを調べた。

格子モデルの手法による空間シミュレーションにより、格子空間内で増殖する10種のうち最初の1種が絶滅するまでの時間を測定し、格子サイズの増大に対する絶滅待ち時間の伸び方を評価することで、共存のしやすさを評価した。

局所的相互作用系では、大域的相互作用系に比べ、共存は促進される。また、格子サイズの増大に対する共存持続時間は、種内競争がない場合には対数比例であるが、高い種内競争を導入すると冪乗に比例し、共存を極めて高めることが明らかになった。このことは、分散速度の遅い生物では、増殖先を限定されることで種間の共存が高まるだけでなく、集中分布に直接起因する構造的な種内競争の増大も、多様性の維持に大きく寄与することを示す。

日本生態学会