| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-198

丹沢山地のブナ樹皮に生息するササラダニ群集の多様性評価-ブラッシング法を用いた調査例

*山本圭美, 尾崎泰哉, 伊藤雅道(横浜国大・環境情報)

ササラダニ類は主に土壌中に生息する小型節足動物であり、樹上や水域にも生息が認められている。ササラダ二類の生息場所としての樹上環境は枝葉と樹皮にわけられ、日本でも枝葉のササラダニ類に関するデータの蓄積は多いが、樹皮ではまだ採取方法も試行段階にある。樹皮は枝葉や土壌とは異なった種組成を示す可能性があり、また樹皮の微小環境内でも同様であるため、さらに研究をすすめるべき場所といえる。海外においてはすでにいくつかの詳細な研究報告があるが、無着生部でのデータの欠落や土壌との比較が無い事など課題も多い。

そこで本研究では、André(1979)により効果が実証済みのブラッシング法を用いて、樹皮のササラダニ類の基礎的なデータを収集することを主な目的とした。調査地はブナの天然林が存在する丹沢山地とし、標高が同じでブナの立ち枯れが進む石棚山、土壌衰退が進む堂平、環境撹乱の少ない菰釣山の3地点を選んで環境撹乱とササラダニ種組成との関係も考察した。各地点で樹皮の環境は無着生、固着、葉状、樹枝状の4タイプに類別した。

調査の結果、樹皮からは61種のササラダニが出現し、うち29種に新種の可能性があった。土壌と樹皮ではどの環境下でも共通種がほとんどおらず、明らかに種組成が異なっていた。また各環境で優占種が異なり、種ごとの出現傾向もいつくかのタイプにわかれた。一方、属レベルで先行研究と比較した結果、地点や環境に共通して出現するものが多いことも明らかとなった。

日本生態学会