| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-215

ヨツモンマメゾウムシ幼虫間競争のIBM

*真野浩行(環境研),徳永幸彦(筑波大),中道康文(筑波大)

種内競争は競争個体間での資源分配に基づいて、全個体間で資源を分配するスクランブル型競争の様式から一部の個体が資源を独占するコンテスト型競争の様式に分けられる。競争後に生き残る個体が得る資源量は競争様式によって異なるため、競争様式は生存個体の生存率や競争後の繁殖力に強く影響し、個体群動態に対する種内競争の効果を決定する。環境に応じて資源分配に関係する形質が進化することや競争行動が可塑的に変化することにより、個体群の競争様式は変化しうる。個体群動態に対する種内競争の様式の影響は古くから理論的に研究されているが、研究に利用される数理モデルでは、個体群の競争様式が変化することは仮定されていない。競争様式の変化の有無は個体群動態に影響するかもしれない。このような理論研究を行うためには、個体の競争行動の変化から競争様式の変化を記述できるモデルが必要とされる。本研究ではヨツモンマメゾウムシの幼虫間競争について幼虫の行動から競争様式を記述する個体ベースモデル(IBM)を作成した。

ヨツモンマメゾウムシの幼虫は豆内部に寄生、摂食する。複数の幼虫が豆にいると競争が起こり、羽化成虫の数や体サイズが決定される。幼虫密度に対する羽化成虫の数や体サイズのパターンは地理的系統間で遺伝的に異なるため、幼虫形質の変化により幼虫間競争の様式が変化することが示唆される。実験結果から幼虫間競争の様式は幼虫の形質に依存した幼虫間の遭遇と殺しあいにより決定されると仮定した。幼虫の遭遇率は成長に依存する。幼虫が成長するとともに他の幼虫との遭遇率は増加する。また、成長可能な体サイズが大きいと、成長期間を通した他の幼虫との遭遇率は高くなる。遭遇時の殺しあいの有無は幼虫が相手を攻撃する確率によって決定される。これらの仮定を踏まえてIBMを作成し、ヨツモンマメゾウムシの幼虫間競争を記述できるかどうかを検討した。

日本生態学会