| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-239

本土と伊豆諸島の筒営巣性ハチ類の利用筒サイズの比較

深澤悟(東邦大院・理)

伊豆諸島は、本州に最も近い大島から最も遠い青ヶ島までがほぼ一直線上に並んでいる。伊豆諸島では、供給源である本土に近い島ほど生息する種が多い(距離の効果)現象が、スズメバチ科で知られている。しかしながら、伊豆諸島の膜翅目の分布パタンについての知見は少なく、更なる調査が必要である。

膜翅目昆虫には、筒営巣性ハチ類と呼ばれ、竹や葦などの筒に巣を作る一群のハチがいる。選択する筒サイズ(口径)は、母バチの体サイズに最適な範囲が選択されていると予想される。また、筒を調べることで、中で育つ子供の形態を観察できる。

本研究では、伊豆諸島の筒営巣性ハチ類の種構成を調べ、分布パタンを明らかにした。さらに、筒サイズを本土と伊豆諸島で比較し、筒営巣性ハチ類が利用する筒口径の地域間変異を明らかにした。

2007年6月から10月の5ヶ月間、本土2地点(千葉県千葉市、千葉県白井市)と伊豆諸島4地点(大島、新島、式根島、神津島)でネストトラップ調査を行い、筒営巣性ハチ類の種構成及び利用筒サイズを調べた。

その結果、千葉市5種、白井市7種、大島7種、新島8種、式根島6種、神津島7種を確認した。従って、筒営巣性ハチ類の種数には、距離効果および面積効果は、認められなかった。上記の理由は、今のところ不明である。

利用筒サイズであるが、オオフタオビドロバチとルリジガバチでは、筒サイズと子供の重量の間には、正の相関が示された。オオフタオビドロバチの選択した筒サイズを本土と伊豆諸島の間で比較すると、伊豆諸島の方が有意に小さかった。一方、ルリジガバチでは有意差は認められなかった。

以上のことから、オオフタオビドロバチは、伊豆諸島では、本土と比較すると個体のサイズが小さく、その結果として小さな筒サイズを利用しているものと推察される。

日本生態学会