| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-249

鹿児島県喜入・谷山におけるフトヘナタリの生態学的研究

*中島貴幸,冨山清升(鹿児島大学 理学部)

フトヘナタリCerithidea rhizophorarumは、東北地方以南、西太平洋各地に分布するアシ原やマングローブ林の干潟泥上に生息している雌雄異体の巻貝である。鹿児島市喜入町を流れる愛宕川の河口干潟にはメヒルギやハマボウからなるマングローブ林が広がっており、周辺の干潟泥上にはフトヘナタリが生息している。コンクリート護岸で、植生の乏しい転石河岸である鹿児島市谷山を流れる永田川の河口域においてもフトヘナタリの生息が確認されている。本研究では、フトヘナタリの新規個体加入時期の特定と、異なる環境における同種の生態学的比較を行うとともに、フトヘナタリと同所的に生息するウミニナBatillaria multiformisとの種間関係も調査した。

サイズ頻度分布の季節的変化調査の結果、喜入では、2mm前後の稚貝が9月頃に出現することから、この時期に新規加入が起こっていることがわかった。また9月に新規加入した個体は、冬にかけて3〜6mmに成長し、春から初夏にかけて10mm前後に成長することがわかった。谷山でも喜入と同様の結果が得られ、この2つの地域におけるフトヘナタリの繁殖時期、新規個体加入時期、成長パターンはほぼ同じであると考えられる。

生息密度調査の結果、平均密度は喜入のほうが高いという結果が得られた。密度効果が個体成長に影響を与えていることが示唆された。

フトヘナタリとウミニナの種間関係調査では、ω指数(巌1977)から同所的生息の程度を求めた結果、同所的に生息するフトヘナタリとウミニナは排他的な分布でないことがわかった。過去の研究例からも示唆される様に、この2種は餌の種類やサイズを異にすることにより同所的に生息しているものと考えられる。

日本生態学会