| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-261

ヒラタシデムシ亜科における食性進化と地理的集団間の遺伝子流動パターン

*池田紘士(東大院・農学生命), 曽田貞滋(京大・理)

ジェネラリストからスペシャリストへの進化は、様々な形態及び生態が特化することによって狭いニッチを占有するような種分化を引き起こし、生物多様性の増加をもたらす。しかし、スペシャリストからジェネラリストへの進化も種分化を促進する可能性がある。シデムシ科では、脊椎動物の死骸というパッチ状に分布する資源を利用する腐肉食(よりスペシャリスト的)から、より一様に分布するミミズやチョウ目幼虫等の無脊椎動物を利用する肉食(よりジェネラリスト的)に食性が進化した。この食性進化に伴い、飛翔によって餌を探索する必要が無くなり、飛翔能力の退化が生じた。この飛翔能力の退化は、個体群間の遺伝子流動の低下をもたらし、地理的集団間の分化を促進して種分化を促進すると予測される。つまり、スペシャリストからジェネラリストへの進化は結果的に種分化を促進しうる。本研究では、日本に生息する腐肉食及び肉食のシデムシ科複数種において、mtDNAのCO1領域約900塩基に関する個体群間の遺伝的変異を、食性の異なる種間で比較した。その結果、肉食で飛翔能力を持たないジェネラリストの方が、腐肉食で飛翔能力を持つスペシャリストに比べて地理的距離の増加に伴う遺伝的距離の増加の程度は大きく、地域個体群間の遺伝的な分化はより大きい傾向がみられた。

日本生態学会