| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-270

水循環再生指標としての外来種

*増田理子(名工大・工),後藤智美(名工大・都市社会)

河川の自然環境の状態や環境汚染の程度などを調べる際に、指標生物の成育状況を調査して方法がある.旧環境庁,建設省が用いていた指標生物は一般にもわかりやすく,簡便な方法で河川の水質がわかるという非常に便利な物であった.現在では,これらは改正され,やや難解になったものの河川の水質を知るのには安価で環境教育の教材としては非常に良いと考えられている.これは,河川の水質を知る上で,温度や湿度、化学成分やその組成、特定成分の濃度、酸素濃度、あるいは明るさなど様々な条件があるが、決まった生物や生物群を選び、それらの状況を見ることで環境条件を判断することができる点で非常に有用である.

しかし,現在,河川環境を把握する上で水質以外に重要なファクター,外来種の侵入を考慮する必要がある.河川環境は絶えず撹乱がおこり,遷移が進行しにくいという点で他の安定した環境と異なっている.新たに出来た裸地に外来種が侵入しやすく,80%以上が外来種で占められるような環境もある.

そこで,本研究では2007年度に水質がA類型の木曽川,及びD類型の庄内川をモデル河川とし,外来種の生育状況の調査を行った.2007年5月に,木曽川および庄内川の国土交通省管理の河川区域内を踏査することによって,オオキンケイギクの生育地を特定し,それぞれの地域の水質状況,降雨時の冠水状況,河川の管理状況(草刈りの頻度など)をマッピングすることによって,どのような条件が外来種の侵入に関係するのかについて検討を行った..

その結果,河川の水質状況は外来種の侵入には殆ど関係が認められなかった.また,増水による撹乱が外来種の侵入に影響を与えていること可能性も認められなかった.今回の調査の結果,外来種の侵入に最も効果的だったのは河川の人工的管理が最も外来種オオキンケイギクの侵入を助けている可能性が高いことが示された.

日本生態学会