| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


企画集会 T01-5

琵琶湖周辺内湖における大型動物プランクトンの群集構造:湖内環境と空間ネットワークの影響

山口真奈,柴田淳也,大石麻美子,合田幸子,奥田昇(京大・生態研)

メタ群集の研究は、ある地域内の局所群集が生物による生息地間の移動分散と生息地内の生物間相互作用とのバランスによって、どのように局所的な群集の動態や生息地間の変異を生み出しているのかを解明しようとしている.従来のメタ群集研究では理論研究が先行し、野外の群集で理論的な概念を検証した例はまだ少ない.湖沼の動物プランクトン群集は局所的に隔離され、その分散経路も限定されているため、生息地のネットワーク構造がメタ群集形成プロセスに与える影響を解析するのに適している.内湖は、琵琶湖沿岸域に点在する付属湖で,琵琶湖に流れ込む集水域の水田や河川の水が滞留しできた湖沼である.また、内湖はサイズや環境に大きな変異があり、異なる距離の水路を介して琵琶湖と直接つながり、本湖を中心としたHUB状のネットワーク構造をもつのが特徴である.このようなネットワーク構造は生物の分散経路に単純な仮定が置けるため、琵琶湖沿岸内湖群はメタ群集解析に適したシステムである.そこで、本研究では、各内湖の局所的な環境要因と生息地の空間ネットワークが琵琶湖水系における大型動物プランクトンのメタ群集構造に与える影響を明らかにすることを目的とした.調査は2007年6月に20箇所の内湖で行った.調査項目として、大型動物プランクトンの群集構造(種組成、密度)や内湖の環境特性(湖の物理化学環境、餌環境や捕食者密度など)及び、内湖間の空間的ネットワーク構造(内湖−本湖間の水路距離、それぞれの位置関係を表す緯度経度座標)をGIS上で計測した.そして、序列化手法(ordination analysis)を用い湖内の環境要因と空間的ネットワーク構造それぞれがどのように琵琶湖周辺内湖群の動物プランクトン群集に影響を及ぼすのか検討した.

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