| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


企画集会 T10-1

北東アジアのコケモモートウヒクラス針葉樹林の組成と分布

中村幸人(東京農大)

北半球の北方帯や温帯の亜高山域にはトウヒ属,モミ属,カラマツ属,マツ属,ツガ属の針葉樹林が極相林として成立する.広い面積を占めるのは北方帯(北緯45-55度)でユーラシア西部を中心にPicea obovata, Abies sibiricaとPinus sylvestrisがシベリア中部を越えてBlack Taigaとよばれている.シベリアタイガの多くはLight TaigaとよばれるLarix gmelinii林で永久凍土地帯を中心に広がる.ユーラシア東部の極東にはPicea jezoensis, P. koraiensis, Abies nephrolepis, A. sachalinensisなどの常緑針葉樹林が沿海部を中心に成立する.北米ではPicea mariana, P. glauca, Abies balsameaが森林帯を形成する.タイガは広い面積を占める割には単純である.林相だけでなく,種組成も貧弱で,理由として気候環境が森林の成立限界に近いこと,地形変化が少ないこと,最終氷期後に拡大した比較的若い森林帯であることなどが考えられている.そのような視点からタイガのルーツは中緯度山岳地帯に求められる.東北アジアもそのひとつで海洋性気候下の沿海部にある温帯および北方帯の山岳には多様な針葉樹林が成立している.日本列島,サハリン,カムチャツカ半島,沿海州における針葉樹林は大きく常緑針葉樹林; Abieti-Piceetalia jezoensisと落葉針葉樹林; Ledo palustris-Laricetalia cajanderiに分かれる.沿海州にはAbieti nephrolepidis-Piceion jezoensis,カムチャツカ,サハリン,北海道にPiceion jezoensis,本州にAbietion mariesiiの植生が現環境と地史の影響を受けて分布している.

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