| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


企画集会 T17-2

自発的な生態系保全行動を誘発する経済メカニズムの可能性

小谷浩示(国際大・国際関係学)

生態系保全活動は経済学の観点からすれば公共財の供給(公共悪の防止)とみなすことができる。しかし、他の一般的な公共財にはない特徴がある。それは、生態系保全の価値を単純に貨幣換算しえないことであろう。故に、保全活動に対する「主観的価値観」は、個々人によって大きく異なるため、政府の介入による更なる予算確保に依存した強制的な生態系保全は一般的な合意を得にくい。一方、近年では政府の主導により、人々の自発的参加や寄付に基づく生態系保全事業が多々見受けられるようになってきた。それらの保全事業は、生態系保全をしたい人達による自発的協力を誘発する最も単純な「公共財の自発的供給メカニズム(Voluntary Contribution Mechanisms, VCM)」を適用している。本報告では、1.これまで経済学者が実証してきた「VCM」の問題点と、2.それに代わる「新たな公共財供給メカニズム(Provision point mechanism, PPM)」の生態系保全活動への応用の可能性について議論する。はじめに、実際の事例に基づいて、VCMが寄付金や自発的参加を促した場合に見受けられる協力率の低下、つまり時間の経過と伴に起こるフリーライダー問題を紹介する。次に、そうしたフリーライダー問題を防ぎ、長期的にも協力率を高く維持でき得る新たな自発的公共財供給メカニズム(PPM)を紹介する。このPPMの長所としては、1.政府がProvision Pointと呼ばれる公共財供給(公共悪防止)に関する閾値を設定することのみが新たなタスクとなりルールが単純なこと、2.そのメカニズムの適用において、更なる費用が発生せず、ナッシュ均衡をパレート最適と一致させることが可能なことが挙げられる。

日本生態学会