| 要旨トップ | 日本生態学会全国大会 ESJ55 講演要旨


企画集会 T20-2

能登半島におけるトキ再生と里山の生物多様性保全

*宇都宮大輔,小路晋作,赤石大輔,木村一也,井下田寛,大脇 淳,笠木哲也,中村浩二(金沢大・能登里山・能登里山里海学校)

能登半島は,豊かな自然(里山)と伝統文化に恵まれているが,近年は過疎・高齢化が進行し,地域社会の維持すら困難になりつつある。能登の再構築には,環境配慮型農業を基盤とする自然共生型の取組が最重要である。「トキが舞う能登」の実現には,(1)トキが生存できる生態環境整備と,(2)「トキを呼び戻す」地域住民の合意形成を双方向に同時進行させる必要がある。能登は,本州最後のトキ生息地であった。いま,過疎・高齢化が進むとはいえ,能登の里山におけるトキ生息の潜在可能性は,佐渡(2008年放鳥予定)と比べてもきわめて大きい。これは演者らの佐渡視察,佐渡の関係者の能登視察によっても確認されている。金沢大学は石川県・奥能登4自治体との地域連携協定を締結し,「能登半島・里山里海自然学校」(三井物産環境基金)と「能登里山マイスター養成プログラム」(科学技術振興調整費)を実施中であり,地域との連携は深く強い。生態学など自然科学者と環境経済学など人文社会科学者が,「トキを呼び戻す」ための自然環境と人間社会の基盤整備にむけた学際研究を構想しており,地域住民参加型の「里山健康調査」は開始され,地域の生物多様性の実態と今後の方向を検討しつつある。「トキを呼び戻す」は,トキのみに限定せず,コウノトリ(豊岡から飛来の可能性大),ガン・カモ,ハクチョウ(いまも能登各地に飛来)を含む生物種を広く対象とする。「トキ放鳥」を目指すのではなく,奥能登を拠点としつつ,広く能登全域において地域と連携した教育研究,保全活動を目指している。農村の自然再生,再活性化の中での生物多様性保全の位置づけ,RDB種やkey-stone species種の扱いについて議論したい。

日本生態学会