| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(口頭発表) B2-02

淡水二枚貝(イシガイ類)の微生息環境、寿命、および移動

*根岸淳二郎,佐川志朗,真田誠至,萱場祐一,久米学,宮下哲也 (独)土木研究所 自然共生研究センター

イシガイ目に属する淡水二枚貝(イシガイ類)の生息環境は全国的に悪化しており、その個体数や生息域の減少が多く報告されている。効果的な生息場所保全や再生を実施するためには、好適な生息環境条件などの情報が重要になるが、その分野の研究知見は限定的である。本研究では、平野部におけるイシガイ類の主要な生息地である農業用排水路および河川本流近傍のワンドにおいて、1)群集構造に影響を与える微生息環境条件を抽出し、2)年間成長量に基づきおおよその寿命を算出し、さらに3)水平あるいは垂直方向の移動特性を明らかにすることを目的とした。微生息環境条件の抽出は、両水域タイプにおいて横断側線上に設定した方形区上で、物理環境および個体生息状況の計測により行った。各種の寿命算出は、マーキング個体を定期的に採捕し季節・年間成長量を測定し、既往の成長量式に投入することで行った。移動特性の把握は、マーキングした個体を採捕し水平移動の程度を計測し(両水域タイプ)、さらに垂直コアを底質に挿入し垂直移動の程度を計測する(水路のみ)ことで行った。微生息環境条件の解析から、水路では横断方向の流速変異が希少種の生息に重要であることが示され、ワンドにおいては粗粒状の堆積有機物量が生息環境の悪化に結びつくことが示唆された。また、これまで約10年とされてきた寿命であるが、両水域タイプにおいて20年以上生息していると推測される個体が比較的多く見つかった。水平移動動態は、特にワンドにおいて、明瞭な種間差がみられ、強い微生息環境選択性を示した種は特に移動能力が高かった。一方、水路においては、横断方向の移動は多くの場合1メートル以内であり、上下流方向に明確な移動選択性は見られなかった。また、個体ごとに見ると季節により明瞭な上下移動をし、その程度は大きな個体ほど顕著であった。


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