| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(口頭発表) B2-06

九州沖縄海域におけるカキ礁生態系の比較遺伝学的調査

*岩崎健史(島根大・汽水研),水戸鼓(鳥取大・連合農学),飯塚祐輔・荒西太士(島根大・汽水研)

カキ礁とは,潟や河口域の砂泥底に形成される三次元構造のカキの群生であり,魚介類やベントスの生息場所として沿岸生態系の維持に重要な役割を果たしている.2007年の全国調査では国内の14地点でカキ礁が確認され,特に九州沖縄海域には8地点も分布していた.これら国内のカキ礁の構成種はマガキ属Crassostreaのみであると推測されてきたが,未だ詳細な研究例はない.一方,天然カキは生息環境により形態が変化しやすく分類同定が困難であることから,本研究ではミトコンドリアDNAの16S rRNA遺伝子部分領域を対象とした分子分類によりカキ礁構成カキを同定した.2008年5〜7月に九州6地点および沖縄1地点の合計7地点のカキ礁から採集した天然カキ252個体を解析した結果,九州6地点のカキ礁ではマガキ属のみ確認された.さらに,国内に広く分布するマガキC. gigasに加えて有明海特産種シカメガキC. sikameaや準特産種スミノエガキC. ariakensisが異なる比で各カキ礁を構成していた.一方,沖縄1地点のカキ礁ではマガキ属2種のみならずオハグロガキ属Saccostrea2種とワニガキ属Dendostrea 1種が確認された上,国内での出現報告がないミナミマガキC. iredaleiやカンムリガキS. cuccullataも含まれていた.以上の結果から,マガキ属以外のカキ類もカキ礁を構成しており,海域毎に構成種や構成比が異なる多様な三次元構造のカキ礁の分布が明らかとなった.


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