| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(口頭発表) G1-01

西シベリア・チャニー湖における生産者から魚食魚までの食物網構造解析

金谷弦(東北大・東北アジア),E. Yadrenkina,E. Zuykova(ロシア科学アカデミー・動物分類生態研),菊地永祐,鹿野秀一(東北大・東北アジア)

チャニー湖は,ロシア・西シベリアの内陸性塩水湖沼群である.本湖は,琵琶湖の2倍以上の面積を持ちながら平均水深は約2.2mと浅く,南北に塩分勾配が発達している.南部のカルガット川河口域は極めて富栄養であり,パイクパーチStizostedion lucioperca ,パーチ Perca fluviatilis や多くのコイ科魚類が生息している。これまでの研究で,同河口域ではプランクトンの安定同位体比が空間的に大きく変動することがわかってきた.本研究では魚類を含む食物網構造の空間変動について,炭素・窒素安定同位体比(δ13C・δ15N)による推定をおこなった.2005年8月に,カルガット川河口域中部(St. A)と下部(St. B)において植物プランクトン(POM),動物プランクトン,さらに当歳魚(プランクトン食性)を採取し,彼らのδ13C・δ15N値を比較した。その結果,サンプルのδ13C値は各地点に特有の値をとり(St. A:-32.5〜-29.8‰,St.B:-29.7〜-26.3‰),δ15N値はPOM−動物プランクトン−当歳魚の順に増加した,この結果は,彼らが互いに食う−食われるの関係にあり,動物プランクトンや当歳魚は各水域内で増殖した植物プランクトンの生産に強く依存していることを示している.最上位捕食者として,St.Aにおいて魚食魚のパイクパーチを採取したところ,そのδ13C値は,非常に大きなばらつきを示した(-28.2〜-23.0‰).彼らは移動性の高い魚食魚であり,当歳魚を摂食しながら河口域内を回遊していると考えられ,δ13C値の個体間変動は,彼らの移動履歴を反映している可能性が高い.


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