| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(口頭発表) G1-08

暖温帯二次林のフラックス観測による炭素蓄積量推定とその問題点

*小南裕志(森総研関西),上村真由子(農環研),牧田直樹,安宅未央子,松本晃(神戸大),深山貴文(森総研関西),壇浦正子(京都大),金澤洋一(神戸大)

京都の南、奈良との県境付近にある山城試験地のコナラ林において1999年から森林のCO2吸収量測定を行った。そこでは、気象観測タワーを用いた微気象学的な手法(乱流変動法)、葉や幹、土壌など森林内の様々な場所でのCO2の吸収量や放出量の観測(チャンバー法)、樹木と土壌にたまる炭素の量の推定(生産生態学的手法+有機物分解モデルによる土壌炭素蓄積速度推定)による群落のCO2交換量の評価が行われた。これらの手法を組み合わせて、妥当な森林のCO2吸収量推定と誤差要因や相互作用の評価を行った。

気象タワーによる観測と、樹木や土壌への炭素蓄積速度によって推定された2000年から2002年までの年平均CO2吸収量は炭素換算でha あたり1.72tであった。生産生態学的な手法から求められたNPPと有機物の分解量の比較から、NPPの70%程度は分解者による呼吸によって再び大気へ放出されると考えられた。推定されたNEPのうち、生きている樹体に蓄積される量が約72%で残り28%は土壌圏に蓄積された。樹体への蓄積に関しては枯死木発生量が生産量の40%以上となっており、枯死量の長期実測による枯死率の精度が非常に重要であった。土壌圏への蓄積については、土壌への蓄積はその28%のうちの74%程度で、あとの26%は林床面に存在する枯死木という形をとって森林内に蓄積されていた。温暖多雨な森林では気象環境が要因となって林床へ供給された有機物の分解量は大きく、また分解によるCO2放出量を土壌呼吸のみから有効な精度で推定することは困難であった。分解呼吸測定とRoth-Cモデルとの相互比較の結果、サイズや器官ごとの林床面有機物の供給−分解収支推定の重要性が確認された。


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