| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(口頭発表) H2-05

草地における小面積当たり植物種数の分布

*塩見正衛(茨城大),陳俊(西北農林科技大・動),山村靖夫(茨城大・理),堀良通(茨城大・理)

草地(草原)の植生では種々の特性が不均一な空間分布をもっている。私たちは、植生の数量的な形質である小面積当たりバイオマスや出現頻度、被度、個体数が統計学でよく用いられるいくつかの確率モデルで表現できることや、それらの関数間の数学的・生物学的関係についての研究を行ってきた。以下では、これら植生の諸特性とは別に、植生の質的特性としての種数や種構成の小面積当たりの空間的不均一性について、これまでに行ってきたいくつかの野外調査の結果を報告する。

調査:(1)放牧を行っている草地に50mのライントランセクトを引き、50cmごとに10cm×10cmの小区画を100個とり、それぞれの小区画内に出現した種名を記録した。(2) 50mのライントランセクト上に50cm×50cmの小区画を100個並べて、それぞれの区画内に出現した種名を記録した。(3)1m×1mの区画を100個の10cm×10cmの小区画に分け、各小区画内に出現した種名を記録した。

解析:「出現したすべての種が小区画間でランダムに分布している」という仮定のもとに帰無モデルを構成し、上記の調査で得られた種数データの頻度分布がこのモデルに適合しているかどうかを検討した。

結果:(上記の)調査で得られたデータを解析した結果のほとんどのケースで、「出現したすべての種が小区画間でランダムに分布している」という仮定を否定できなかった。これまでの研究結果では、種ごとのバイオマス、被度、出現頻度などの植生の数量的形質がランダム分布から外れた強い空間的不均一性を示すのに対し、質的形質である種数の空間分布ではなぜランダム分布を否定できないのか、その理由は不明である。


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