| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(口頭発表) H2-06

土壌微生物の多様性は植物の共存を促進するか?ー植物−微生物−土壌フィードバックモデル

三木健(國立台湾大學海洋研究所)

植物群集と土壌栄養塩環境はお互いに影響を及ぼしながら生態系を形成している。この「植物−土壌フィードバック」は植物の群集構造と栄養塩循環を決定する重要な過程である。この文脈においてはこれまで、植物のリターの質が栄養塩の無機化速度を制御する過程に注目が集まっていたが、リターの分解を実際に担っている微生物群集の果たす役割については理解が進んでいない。そこで、(1)リター中の栄養塩は分解の過程で微生物のバイオマスに取り込まれる「不動化」過程を経てのち植物の利用可能な形態に無機化されること、(2)土壌中の微生物の機能的多様性の下では植物のリターの質に依存して微生物群集の組成が変化することに注目し、植物群集・微生物群集・土壌間の栄養塩循環モデルを構築した。このモデルの数学的解析の結果、微生物群集が機能的多様性を持つ場合には、リターの質に依存して不動化効率が群集レベルで変化し、それにより無機化速度はリターの質の影響を受けにくくなるとの予測を得た。つまり、微生物群集の持つ機能的多様性は、ある種の「緩衝剤」としてはたらいていると考えられる。この緩衝作用は植物−土壌間での正のフィードバックを負のフィードバックに変える傾向があり、これにより、植物の共存が促進されたり、双安定状態が生じにくくなったりすることが明らかになった。


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