| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(口頭発表) K1-10

毒性試験とマイクロコズム試験に基づく非標的生物への土壌散布薬剤の生態影響評価

*谷地俊二, 金子信博 (横浜国大院・環境情報), 大塚知泰 (神奈川県・環境科学セ)

本研究は、神奈川県が薬剤散布によるヤマビル防除効果を確認する実証試験の一環で、非標的生物が受ける生態影響評価を行なった。トビムシを対象生物として、土壌生態系の複雑さを考慮するために試験方法は次の3つを用いた。1)従来からの毒性影響試験で用いられるOECDやISOの試験手順に従い2種の特定種による室内での生態毒性試験。2)野外を再現し、環境要因の制御が可能な、非破壊マイクロコズム試験 (TME)を用いて、トビムシ個体数、土壌散布後の薬剤動態および生態系機能として土壌呼吸量、セルロース分解量、硝酸態窒素濃度への影響を評価。3)実際の野外における環境影響調査として、薬剤0.5 g/m2を耕作放棄地に散布し、トビムシ個体数と土壌散布後の薬剤動態を確認した。

結果は、1)で、トビムシのLC50は2種ともに環境影響調査の散布量0.5 g/m2よりもやや高い値となった。2)で、薬剤は1ヶ月後に散布量の約0.01%が土壌中に残留した。生態系機能のうち、硝酸態窒素濃度は1週間後に散布量に対して増加傾向を示した。トビムシ個体数は1ヶ月後に2 g/m2散布した際に個体数が減少した。3)で、散布量0.5 g/m2におけるトビムシの個体数への影響は、1週間後および1ヶ月後にもみられなかった。また薬剤動態は、1週間後に土壌中の残留が確認された。しかし、トビムシ個体数変化の説明はできなかった。

結果より、1)は2)、3)の野外影響と異なり、低濃度でのトビムシ個体数影響が確認できた。1)が特定種を用いた閉鎖系の試験であるに対し、2)は野外を再現したものであり3)は実際に野外でトビムシ群集を指標とした開放系試験であったため、群集構造や種感受性、行動が影響したと考えられる。


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