| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(口頭発表) M1-07

異形世代交代と同形世代交代の進化〜海藻の生活環と季節適応〜

別所和博*,巌佐庸(九大シス生)

海藻の多くは、半数体世代(配偶体)と2倍体世代(胞子体)が独立した藻体をもち、それらが減数分裂と接合で世代交代をする。さらに、その世代交代のパターンは大きく分けると、片方の世代が大きな藻体になりもう片方の世代が小型になる異形世代交代と、両方の世代が同じ形と大きさになる同形世代交代の二つに分類でき、それらは緑藻、褐藻、紅藻の各グループに見られる。

我々は、これらを季節変化する環境への適応の結果として理解する数理的研究を行った。そこでは生産力が季節変化する環境を設定し、大きな藻体をもつ生活形は多量の資源を要求し捕食者や物理的撹乱を受けやすいため季節性が強く、小さな体の生活形は成長が遅いが安定した生存が見込めると仮定し、各世代の最適世代交代(成熟)タイミングについて調べた。

その結果、異形世代交代をする種は、大きな藻体をもつ世代が生産力の高い季節に生育して、小型の世代が生産力の低い季節に生育するようなタイミングでの世代交代が最適であった。そして、同形世代交代をする種は、全ての世代が一定の成熟サイズに達した時点で成熟するようなタイミングでの世代交代が最適であった。また、異形世代交代をする種は同形世代交代をする種と比較すると、より季節変化が激しい環境化で有利となることが予想された。


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