| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PA1-113

アリの種によって異なる種子散布の意義

*大西 義浩(鹿児島大院・連合農),鈴木 信彦(佐賀大・農)

食べ残し型種子散布において、収穫アリや雑食性のアリによって運搬される種子は、食料としてほとんどがアリに消費されるが、アリが食べ残したり、運搬途中に紛失(放棄)したりした種子は結果的に散布されたことになる。このような食べ残し型の種子散布では、種子散布者は種子捕食者でもあるため、種子散布者の種子運搬、種子紛失、種子食害、種子遺棄などの行動が種子の運命を決定する重要な要素となる。そこで、本研究では、オオズアリとトビイロシワアリによるコニシキソウの種子の紛失率、食害率、遺棄率などを調べることで種子の運命を予測した。さらに、アリによって種子が運搬された場合の実生の分布様式を実験的に調べることで実際の散布効果を推測し、それぞれのアリによる種子散布の意義を考察した。

オオズアリは、種子を巣へ搬入するまでにさまざまな場所で種子を紛失する確率が高く、一度巣へ運び込んだ種子のほとんどを消費した。そのため、巣口周辺には実生は出現しなかったが、紛失によって散布される範囲が広かった。一方、トビイロシワアリは、種子の紛失率は低く、巣へ運び込んだ種子の約半数を食害せずに再び巣外へ搬出した。したがって、巣口周辺に実生が集中して出現した。また、トビイロシワアリはコニシキソウの種子表面の物質に対して選好性を示し、巣内に持ち込んだ種子の表面のみを消費する場合がみられるため、種子の食害率が低かった。

どちらのアリに種子が運ばれてもコニシキソウは分布範囲が拡大し、新たな生育環境を獲得できるが、種子散布の意義はアリの種によって異なっていた。トビイロシワアリは低い食害率によって種子散布に貢献し、オオズアリは高い種子紛失率と散布場所の分散によって種子散布に貢献していた。これらの違いは、コニシキソウの種子の価値がアリの種によって異なることによってもたらされたと考えられた。


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