| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PA1-154

海岸防災林におけるクロマツと広葉樹の生育状況の比較

*島田和則,坂本知己,鈴木覚,萩野裕章,野口宏典,後藤義明(森林総合研究所)

海岸防災林として広く造成されているクロマツ林は,北海道・青森県を除きマツ材線虫病の被害が進行している。クロマツ林として維持するためにはマツ材線虫病の防除が必要であるが,海岸防災林としての機能を維持しつつ防除を軽減する策の一つとして,防除が不要な広葉樹林への転換が考えられる。しかし,クロマツ林を広葉樹林化するにあたっては,飛砂や塩風にさらされる環境下で,クロマツと比較して同等の生育ができるのか,防災機能からみて十分な樹高を維持できるのかについて明らかにしておくことが必要である。そこで,気候条件や植物相の違う太平洋側と日本海側の海岸林のクロマツと広葉樹の混交する林分において,汀線から内陸に向かっての傾度上で,クロマツと広葉樹の生育状況(特に樹高)を比較した。

その結果,太平洋側の調査地ではマサキ,トベラ,シャリンバイ,ウバメガシについては群落高4から5mくらいまでは,クロマツとほぼ同等の樹高を維持できることがわかった。しかし,これらの樹種は低木から亜高木性の樹種のため,群落高が高くなるさらに内陸側では,クロマツと同等の樹高は期待できない。また日本海側の調査地では,カシワについては,汀線側の最前部でも健全に生育し,内陸側ではクロマツの庇護がなくても樹高が高くなり,置き換えが可能であることがわかった。また要注意外来種として問題になっているハリエンジュについては,クロマツの庇護がないと樹高は大きく低下して矮性化し,クロマツと同等の防災機能は維持できないと考えられた。


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