| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PA1-203

ベトナム・カンザー地域のマングローブ林における水質変動特性

*野原精一,井上智美(国立環境研),浅野哲美(マングローブ植林行動計画)

メコン河はアジア最大級の国際河川で,水・エネルギーおよび生物の天然資源として開発への強い興味が持たれ続けてきた.その流域において都市化・工業化・農薬及び肥料を多用する農業の近代化やダム建設によって自然が急速に失われつつあり,農業・産業・生活による水資源の枯渇と水質悪化や水生生物等の生物多様性の減少が危惧されている.そこで,メコン河の流域開発の影響を評価する手法を開発する事を目的にベトナムのメコンデルタにおける水質変動特性について調査を実施した.そこでのダム開発などの土地改変は土砂の流出量を変化させ,最下流域での土砂堆積が変化すると予想される.2007年3月及び2008年2,6,9月に重点地区のサイゴン川とカンザー・ユネスコ生物保護区で調査した.都市域の河川でアンモニア態窒素濃度(1.00mgl-1)が非常に高かった.9月のマングローブ林地域の水路の硝酸態窒素とアンモニア態窒素,リン酸態リン濃度はそれぞれ平均して0.49,0.05, 0.09 mgl-1であった.塩分0.1〜18.6 psuでのLLIST-100で測定した懸濁粒子の中央粒径は11.0〜27.5μmであった.塩分濃度が増加すると中央粒径や体積濃度が増加し,懸濁粒子の凝集化が推測された.マングローブ林の底質表層の粒度のピークは約10μmであったが70μmにも肩があった.9月の潮位変化は3.1mあり,水路の水深は3.1〜13.5mで,濁度は表層(8.6unit)では少なく底層(735unit)で高かった.枯れ葉剤で破壊された後のマングローブの植林実態を調査したところ,植林は主要樹種2種で行われ現在のマングローブ林は自然に近いまでに回復したと思われるが,大型船の運航に伴う河岸浸食とその対岸での土砂堆積を伴ってマングローブの天然更新が同時に起こっている実態が明らかになった.


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