| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PA2-422

ヒノキアスナロ天然林の遺伝変異

*三嶋賢太郎,高田克彦(秋県大 木高研),平尾知士,渡邉敦史(森総研 林育セ)

ヒバ(ヒノキアスナロ;Thujopsis dolabrata var. Hondae)は、アスナロ(Thujopsis dolabrata)の北方変種であり、その分布は北限を北海道渡島半島とし、南限を栃木県日光湯ノ湖付近とされる(林 1960)。現在の分布は極めて断片的であるが、比較的大規模な天然林が青森県を中心に分布している。本種は、ヒバ、ヒノキと同様に材質の優良さゆえに古くから利用され、天然林が優占する地域では林業上重要な位置を占めてきた。

本種の分布地域は断片的かつ小規模化しているため、遺伝資源の維持という観点から残存天然林集団の保全・管理に向けた知見の集積が必要となる。これまでに本種の天然林の遺伝的多様性に関する研究は、山口ら(1996)が、アイソザイム分析によって鶯宿地方の天然林を対象に行った報告があるが、全国の天然林の遺伝的多様性及び分化に関する知見の集積は不足している。以上のような背景から、本発表では、全国の天然林集団の遺伝的多様性及び分化の解明をマイクロサテライトマーカー用いて行った。分布地域を網羅するようにサンプリングを行い、供試集団として北海道から2集団、青森県から7集団に加え、岩手県から3集団、佐渡、石川県珠洲、群馬県の各1集団、合計15集団から約340個体を用いた。解析には本種を対象に新たに開発した核マイクロサテライトマーカーを開発し使用した。

現在までに、3マーカーによる実験解析を終了している。その結果、遺伝子多様度やallelic richnessによる集団内の遺伝的多様性については分布の北から南かけてやや大きくなる傾向が見られた。集団の分化を示すFSTは、0.061であった。本発表では、さらに解析マーカー数を増やして解析を行った結果を報告したい。


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