| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PA2-427

栃木県に残存する太平洋側低地ブナ集団のPCR-RFLP法によるハプロタイプの検討

*数金 真理子(宇都宮大院・農),小林 幹夫(宇都宮大・農)

栃木県では益子町高館山(標高301.8 m)をはじめ、低標高地にブナが出現する。この特異な分布を示すブナ集団のハプロタイプ解析は空白である。本研究の目的はオルガネラDNAをプローブとしたPCR-RFLP法で、これらのブナ集団のハプロタイプを検討し、集団間関係を明らかにすることである。採集地と試料数は(1)太平洋側低地:塩谷町船生演習林6、南那須町荒川右岸27、出流山8、高館山18、雨巻山6、鷲子山5;(2)太平洋側気候区:高原山尚仁沢31、茨城県八溝山31、筑波山33;(3)太平洋側―日本海側境界:中宮祠29、湯ノ湖29、高山33;(4)日本海側気候区:那須岳中ノ大倉尾根38、那須甲子道32、大川林道16、女夫渕33;(5)他地域:北海道賀老高原30、静岡県天城山32、函南原生の森11。ミトコンドリア遺伝子coxI、coxIII、atpAと葉緑体遺伝子trnL/F、trnKをプローブとし、6塩基認識の41種の制限酵素と組み合わせた予備実験により切断が確認された組み合わせを使用した。trnL/F―EcoRIは(1)〜(4)で815bp、(5)で667・170のバンドを検出した。trnL/F―HincIIでは(1)〜(4)で340・271・204、(5)では340・293・204のバンドを検出した。trnK―AseIでは(1)〜(4)で1502・317、(5)では1109・393・317のバンドを検出した。他方coxI―BamHI、coxIII―SspI、atpA―SspIはそれぞれ2本の切断片を検出し、全集団間、集団内で遺伝的な変異は見られなかった。よって太平洋側低地を含む栃木県から茨城県の集団は他地域と異なるハプロタイプを持つことを示した。


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