| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PA2-429

落葉低木ユキヤナギの地域間での形態変異

*芦澤和也(明治大院・農), 倉本宣(明治大・農)

落葉低木ユキヤナギ(Spiraea thunbergii Sieb.)は、植栽樹として多く利用されている一方で、河川の岩場に生育している。ユキヤナギの種子発芽特性や生育地特性に関しては、既往研究があるが、地域間の変異などについては未解明であった。本研究は、ユキヤナギの地域間での形態変異や自生と植栽の形態の差異を明らかにすることを目的として、花弁の形状について調査を行った。

花弁の採取地点は、阿武隈川(福島県)、荒川(埼玉県)、多摩川(東京都)、大千瀬川(愛知県)、水窪川(静岡県)、安威川(大阪府)、園瀬川(徳島県)の河岸の岩場とした。さらに、東京都西多摩郡奥多摩町白丸の民家、明治大学生田キャンパス(神奈川県川崎市)における植栽個体からも花弁を採取した。各地点における数個体それぞれから、花弁約20〜100個を採取し、各花弁の長径(花弁長)と短径(花弁長と垂直の方向の長さ)をデジタルノギスを用いて、測定した。花弁の形を楕円と仮定し、上記の結果から、扁平率((長径-短径)/長径)を算出した。

各地点における平均扁平率(mean±S.D.)は、阿武隈川で0.24±0.06、荒川で0.24±0.07、多摩川で0.39±0.07 、大千瀬川で-0.007±0.08、水窪川で0.26±0.09、安威川で0.32±0.07、園瀬川で0.27±0.08であった。植栽の個体の平均扁平率は、奥多摩町白丸で0.15±0.04で、明治大生田で0.17±0.08であった。以上のように、河岸の岩場に生育している個体に比べ、植栽されている個体の花弁は幅広の傾向があった。ただ、大千瀬川の岩場に生育する個体由来の花弁は極めて幅広であった。

なお、本発表では、葉の形態の差異についても発表する予定である。


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