| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PA2-437

渇水後,クロモはなぜ増加したのか?―照度との関係―

*吉川剛明,浜端悦治(滋賀県立大学)

琵琶湖南湖沿岸では1994年の大渇水以降、クロモ(Hydrilla verticillata)など数種の沈水植物の現存量が増加しはじめ、2002年には南湖の80%以上の面積が沈水植物に覆われた。そのように沈水植物の現存量が増加した原因は、水位低下時に湖底に届く光量が増加したことによると考えられている。

そこで本研究では、光強度を段階的に変化させて栽培実験を行うことで沈水植物の生産及び再生産に光が与える影響を定量化することを目的とした。実験には琵琶湖・淀川水質浄化共同実験センター水路(幅:2m、長さ:24m、水深0.9m)を用い、相対照度を6条件(水面照度の80,40,20,10,5,1%)に設定し、クロモを6から12月にかけて栽培した。実験では、クロモの塊茎のみを13cm径のポットに1個体ずつ植え付けた。植え付け後、約1カ月間隔で5回、20cm毎に層別刈り取りを行い、現存量及び塊茎数などを測定した。

クロモの地上部現存量は照度の強い条件区ほど大きく、5%以下の条件区では現存量が著しく小さかった。また、10%以上の条件区では現存量が植え付け後約4カ月増加し、6カ月目には地上部がすべて枯死した。一方、5%以下の条件区では栽培していたすべてのクロモが3カ月目には枯死していた。これらのことから、クロモの生育限界照度は5から10%の間にあると考えられる。塊茎に関しては、10%以上の条件区では植え付け後4カ月以降に形成が確認されたが、5%以下の条件区では確認されなかった。80%区では最大76個/ポットの塊茎が確認され、良好な光条件がクロモの再生産を促進することが確認された。

これらの結果は、渇水時の水位低下が湖底に届く光量を増加させ、琵琶湖南湖における沈水植物の現存量が増加したという考え方を支持するものである。


日本生態学会