| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PA2-449

多年草レンゲショウマの個体群動態と休眠

*鈴木まほろ(岩手県博),木村恵(東大ア生セ)

多年草の生活史と個体群動態の関係を調べるため,レンゲショウマAnemonopsis macrophylla L.(キンポウゲ科)の個体群において,約150個体を識別し,地上シュート数・花数・葉面積等の変化を4年間追跡した.

レンゲショウマでは,地下茎に残るシュート痕から,地上にシュートを出した回数(=年数)を読み取ることができる.観察個体の約半数の地下茎を調べたところ,年数の範囲は9年〜55年で,20〜30年の個体が最も数が多く,全体としては中央が高い山型の分布を示した(鈴木・木村,第55回大会ポスター発表).また個体によっては,地下茎にできた冬芽が翌春に展開せず,地上にシュートが出現しない年があった.この現象を,本研究では仮に休眠と呼ぶ.

調査を行った4年間に,観察個体の36%が1年以上の休眠を経験した.そのうち81%は,次の年に地上にシュートを展開した.この休眠率および回復率の高さを考えると,地下茎のシュート痕から読み取れる年数(地上年齢)は,個体の真の年齢よりも少ない可能性が高い.

個体の葉面積は平均862cm2(範囲:15−3100cm2)で,休眠経験のある個体のグループの方が無いグループよりも平均値が有意に小さかった.また,休眠が観察されたのは葉面積が1150cm2未満の個体に限られ,94%は休眠の前年に花を付けていなかった.さらに,個体密度の高いプロットでは個体の休眠経験率が高かった.一方,地上年齢の分布を両グループの間で比較したところ,ほとんど違いが見られなかった.

レンゲショウマは耐陰性が高く,暗いスギ林の林床でも大きな群落を作ることがある.以上の結果から,地上年齢の分布が山型になる理由と,本種にとっての休眠の適応的意義について考察する.


日本生態学会