| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PA2-454

シルビアシジミの保全に関する研究

山口祥伸(神戸大・院・人間発達),武田義明(神戸大・人間発達)

現在シルビアシジミは,環境省レッドデータブックでは絶滅危惧1類に、兵庫県版レッドデータブックではBランクに記載されている.現在でも、各地で個体数の減少が懸念されている.原因として,草地管理が行き届かず高茎草本が優占してしまったことや外来種の侵入・生息地の拡大などによる食草ミヤコグサの減少が考えられる.そのため、ミヤコグサ生息地の保全が重要となっている.

本研究では,兵庫県南西地域で確認されているシルビアシジミ生息地にて植生調査を行い,ミヤコグサがどのような群落に生育しているのかを明らかにした.そして,区分した群落におけるミヤコグサ植被率の平均や群落の平均草丈の平均を比較した.またシルビアシジミの有無は,その食草であるミヤコグサの生育面積に関係していると仮説を立て,調査地点ごとにミヤコグサの生育面積を計測した.その結果から,シルビアシジミが生息するのに必要なミヤコグサの生育面積を推定した.

その結果,ミヤコグサ生息地の植生はチガヤ−ヒメジョオン群集に所属することが分かった.この群集はさらに下位群落として,チガヤ−シバ群落・チガヤ群落・チガヤ−ススキ群落・チガヤ−ススキ群落クズ下位単位に分けられた.また,ミヤコグサ植被率の平均は,チガヤ−シバ群落で7.9%と最も高く,平均草丈の平均は,チガヤ−シバ群落で0.26cmと最も低かった.このことから,ミヤコグサの生育に最適な群落は,チガヤ−シバ群落と推察された.シルビアシジミが生息しているミヤコグサ生育地の最大面積は2887m2で,最小面積が857m2となった.また,シルビアシジミが生息せず,ミヤコグサが生育している場所の最大面積は469m2で,最小面積は367m2となった.このことから,シルビアシジミの生息には少なくとも1000m2,以上のミヤコグサ生育面積が必要ではないかと推察された.


日本生態学会