| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PA2-455

波崎海岸に生育するコウボウムギと根圏微生物の相互作用の解明

*松岡宏明・山路恵子・小林勝一郎(筑波大・生命環境)

生態系における植物間の相互作用には、高山帯や海岸など厳しい環境になるほど相利的相互作用が働く、という仮説が提案されているが、本仮説は海岸におけるストレス環境下の植物-微生物間の相互作用においても充分に成立すると予想された。

そこで本研究では、厳しい生育環境である海岸砂丘において植物とその植物と共に生育する根圏微生物、この二者の関係を明らかにすることで植物と根圏微生物の相互作用に関して基礎的知見を得ることを研究目的とした。1)茨城県波崎海岸での2007年6月からの現地植生調査から優占している対象植物を選定し、及び植物の生育形態の観察、含有無機成分量分析2)pH(H2O)、EC(電気伝導度)、交換性陽イオンなどの土壌分析、3) 対象植物からの根圏微生物の分離を行い、リンの可溶化能、シデロフォア産生能を調べた。これらの結果から対象植物の生育環境及び根圏微生物を明らかにした。

茨城県波埼海岸で海岸線から最も近い厳しい環境に優占していたのは、コウボウムギ(Carex kobomugi Ohwi)であった。植物の成長、含有無機栄養成分、及び土壌環境の季節変動の調査から、コウボウムギは、塩ストレス要因となるNaを積極的に地上部に移行していることが明らかになった。同時に、Na以上にKを吸収することで、塩ストレス耐性を獲得していると考えられた。コウボウムギの根の周囲では水分量、交換態の無機成分量といった土壌環境の季節変動はなく安定していた。根内から微生物を分離した結果、7〜9月では主に細菌の出現率が高いことが明らかになった。細菌菌株の中ではリン可溶化能、シデロフォア産生能を有する株が得られ、現在これらの菌株がコウボウムギの成長にとって促進的に寄与するか、どうか、検討中である。


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