| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PA2-463

小笠原諸島のアーバスキュラー菌根菌

*坂田益朗(東大院・新領域), 小嶋禎夫(小笠原亜熱帯農セ),可知直毅(首都大院・理工),福田健二(東大院・新領域)

近年,外来種の蔓延による固有種への悪影響が顕在化している小笠原諸島では,様々な生物多様性保全研究が行われている.それらは主に地上部の生物を対象として検討されてきたが,ふだん目に見えない「地下部の生物多様性」にも注目すべきである.本研究では,土壌中で植物と共生し,養分吸収や耐乾性,耐病性を向上させるアーバスキュラー菌根菌(AM菌)に着目し,AM菌の島内分布と群集構造の解明を目的とした.

小笠原諸島の父島,母島,兄島,南島から計40科73種の植物根を採取した.根のトリパンブルー染色により,69種の根内でAM菌が確認された.各島の固有種,広域分布種,外来種のいずれにもAM菌が見られた.採取できたすべての絶滅危惧植物にAM菌が見られ,特にキク科の固有種ユズリハワダンCrepidiastrum ameristophyllum(絶滅危惧IA類),ワダンノキDendrocacalia crepidifolia(絶滅危惧II類)には非常に高い感染率でAM菌が存在していた.また,トウダイグサ科の外来種アカギBischofia javanicaもAM菌感染率が高かった.アカギは島内での異常繁茂が問題となっているが,その原因のひとつとして AM菌を効果的に利用しているのかもしれない.

植物根内に感染しているAM菌のrDNAをPCR-DGGE法を用いて増幅,分離し,塩基配列をシーケンサーで解読した.rDNAのPhylotype(系統型)について島内分布,宿主に対する偏向性等を考察した.固有種にのみ感染していたPhylotypeがみられ,固有種へ偏向的に感染するAM菌の存在が示唆された.


日本生態学会