| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PA2-480

ニホンホホビロコメツキモドキにおける大顎の左右非対称性と寄主植物サイズの関係

*土岐和多瑠,富樫一巳(東大院・農)

動物の外部形態は一般的には左右対称であるが、左右非対称な動物も存在する。そのような動物にとって、非対称性は生存や繁殖にとって有利な形質となっていることを示唆している。甲虫の一種ニホンホホビロコメツキモドキDoubledaya bucculentaは、メス成虫特異的に頭部左側が発達するという特異な形態的特徴を持つ。演者らは、これまでに本種の非対称性が産卵行動時の寄主植物への穿孔に際して適応的な形態であり、モデルによって寄主植物の材が厚くなるほどより左右非対称な頭部形態が穿孔に効率的であることを示した。

今回演者らは、本種の左右非対称性の程度と寄主植物の材の厚さとの関係を調べた。個体群内において左右非対称の程度は体サイズによらず一定であったが、個体群間においては違いが見られた。個体群ごとに左右非対称の程度とその個体群が利用する寄主植物群落の材の厚さとの関係を調べた結果、これらの間には正の相関が見られた。すなわち、寄主の材が厚くなるほど左右非対称の程度は大きくなっていた。これは、モデルで推定された結果とよく合致しており、材の厚さによって最適な左右非対称の度合いが存在することを示唆している。


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