| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PA2-502

植物個体群動態のネットワーク構造解析

*中河 嘉明(筑波大), 横沢 正幸(農環研), 鞠子 茂(法政大), 原 登志彦(北大)

植物個体群集における消費競争の様相を定量化することは、その維持、発展、更新を理解する上で重要である。ここでは、複雑ネットワーク理論を援用して、その定量化を試みた結果を報告する。植物個体をノードとし、個体間の競争の強さを個体サイズと距離の関数で表し、競争の強さがある値以上のノード対をリンクとみなして競争ネットワークを構成する。簡単な個体ベースモデルを用いて、生長、競争および枯死のダイナミクスとそのネットワーク構造との関係を解析した。実際のトドマツ個体群の毎木データを用いてモデルのパラメータを決めた。

複雑ネットワークの特徴をしめす主な指標には、次数や平均クラスタリング係数などの統計的指標がある。次数とは、あるノードにつながっている他のノードの数である。また、あるノードのクラスタリング係数とは、そのノードとリンクされている全ノードの内の2点をつなぐときに、実際につながっている数を、実現可能な全ての組み合わせの数で割ったものである。つまり3つのノードが互いにリンクされた組(トライアングル・フォーメイション)の数の割合である。さらに、それを、ネットワークの全てのノードで平均化したものを平均クラスタリング係数という。

結果、個体群のダイナミクスが進行すると、前期においては次数とクラスタリング係数は共に増加することが確認された。一方、後期においては、次数はしだいに減少に転じ、それに伴って、クラスタリング係数の増加は鈍り、しだいに一定になることが観測された。このとき、枯死過程をランダムに設定すると、クラスタリング係数は一定にならず増大し続けることから、競争の強さに依存した枯死過程が、リンクやトライアングル・フォーメイションの破壊に対して、一定の規則を与えているものと考えられる。


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