| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PA2-536

黒潮・親潮混合域の季節な環境変化に対応したオオミズナギドリの採餌利用海域の変化

*山本誉士(総研大), 高橋晃周(極地研), 勝又信博(東大海洋研), 佐藤克文(東大海洋研), 岡奈理子(山階鳥研), Philip Trathan(英国南極局)

外洋性海鳥類の採餌利用海域とその海洋環境の特徴を明らかとすることは、彼らの採餌戦略を理解する上で重要である。だが、海上を自由に移動する海鳥を継続的に追跡するのは難しい。近年、動物に衛星発信機などの機器を装着することにより、彼らの海上での移動を追うことが可能となった。だが、その記録期間は短く、ある一定期間の採餌利用海域しか明らかとできない。日本周辺の海洋環境(表層水温)は海流の季節的な勢力変化に伴って春から夏にかけて上昇する。そのため、海洋環境の季節的な変化に対して外洋性海鳥類もその利用海域を変化させていると考えられる。

そこで、本研究では外洋性海鳥であるオオミズナギドリに小型記録計を装着し、得られたデータより、春から夏にかけての海洋環境の季節的な変化に合わせて彼らの採餌利用海域がどのように変化するのかを明らかとすることを目的に行った。解析の結果、オオミズナギドリは主に1) 繁殖地周辺の海域、2) 13‐16℃の水温域の2つの海域を採餌に利用していた。オオミズナギドリの主な餌であるカタクチイワシは12‐15℃の比較的狭い範囲の水温帯を好むことが知られている。つまり、春から夏にかけての水温分布の変化に合わせて移動するカタクチイワシに対して、オオミズナギドリも採餌利用海域を徐々に北へと変化させていると考えられる。また、交尾期の前(5月)には採餌利用海域に雌雄間で違いが見られた。メスは繁殖地から離れた12-15℃の水温海域を利用する一方、オスは繁殖地周辺の海域を利用していた。交尾期の前にはオスは頻繁に帰巣を行うようになるため、採餌範囲は繁殖地周辺に限られる。オオミズナギドリの採餌利用海域には雌雄間の繁殖戦略の違いも影響を及ぼすことが示唆された。


日本生態学会