| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PA2-605

mtDNA分析により検討した中国産カワリヌマエビ属の侵入

*遠山裕子,池田 実(東北大院・農),丹羽信彰(六甲アイランド高校),大高明史(弘前大・教育),Wang Hong-Zhu,Yongde Cui(Chinese Acad. Sci.),Wang Zhi-yong, Chen Rongbin(Jimei Univ.), 西野麻知子(滋賀県琵琶湖環境科学研究センター)

釣餌や観賞用として輸入された中国のカワリヌマエビ属Neocaridinaが日本に侵入し、在来のミナミヌマエビN. denticulata denticulataに対して負のインパクトを与えていることが危惧されている。我々は、輸入エビの採集地域である河南省を含む中国の集団と日本の集団のmtDNAの系統解析を行い、現在日本に分布する系統がIとIIの2クレードから構成されることを見いだした。Iは国内のハプロタイプのみで構成され、IIは中国のハプロタイプも含んでいることから、中国のカワリヌマエビ属が国内に侵入している可能性は極めて高い。本属の分類体系は混乱しているが、分布記録や雄の第3・4胸脚前節が湾曲する特徴から、侵入種はN. palmataN. heteropoda等であると考えられる。しかし、N. denticulata亜種群は中国にも分布しており、当該地域の集団は調べられていない。本研究は、本亜種群の分布域である福建省の9集団について同様の系統解析を行い、形態的特徴も併せて調べた。その結果、8集団のハプロタイプは全てクレードIIに含まれ、全ての雄の第3・4胸脚前節は湾曲していた。残る1集団では全個体がクレードIのハプロタイプを有し、殆どの雄個体の前節は湾曲せず、N. denticulata亜種群に属することが示唆された。このことから、現状の形態ならびに系統の情報では捉えきれない侵入が起きている可能性がある。


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