| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PA2-609

外来植物ブタクサは外来昆虫ブタクサハムシに対して進化しているのか

*深野祐也,矢原徹一

外来植物が天敵のいない地域へ侵入した後,その外来植物の天敵が遅れて侵入し,宿主を激しく加害する例が知られている.このような場合,外来植物は遅れて侵入した天敵に対して急速な対抗進化をすることが予想される.しかしこのような予想はほとんど検証なされていない.

北米原産のブタクサは約100年前に日本に侵入し,全国に定着した.ブタクサの天敵であるブタクサハムシははじめて日本に侵入し,全国に分布を拡げた.しかし,北海道や島嶼などブタクサハムシが侵入していない地域もある.そこで,ブタクサハムシに10年ほど加害されている筑波のブタクサと,ブタクサハムシの侵入していない対馬のブタクサを用いて,筑波のブタクサでブタクサハムシへの対抗進化が起きている可能性を検証した.

本研究では,ブタクサハムシを用いて飼育実験と選好性実験の2種類の実験を行った.飼育実験では,野外から採集した親から得た卵塊を2つに分け,それぞれに同一条件下で栽培した筑波のブタクサと対馬のブタクサを食草として与え,成虫になるまで飼育した.また,選好性実験では,それぞれの同一条件下で栽培した筑波と対馬のブタクサ株を並べ,ブタクサハムシがどちらの株をより摂食するかを検証した.飼育実験の結果,筑波のブタクサで飼育した場合,蛹になるまでの生存率が0.68で,対馬のブタクサでは0.80と有意な違いが見られた.一方,蛹化までの日数,羽化した個体の体重には違いは見られなかった.対馬と筑波のブタクサを用いた選好性実験では,有意に対馬のブタクサを好んだ.これらの結果は,筑波のブタクサがブタクサハムシの激しい摂食に対して進化している可能性を示唆する.


日本生態学会