| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PA2-617

都市化地域における河川の有機汚濁に対する硝化作用の影響

*小倉亜紗美(広島大・院・生物圏,JSPS特別研究員DC),竹田一彦,中坪孝之(広島大・院・生物圏)

BOD(Biochemical Oxygen Demand)で評価される河川の有機汚濁は、近年改善傾向にあるがいまだに重要な問題である。BODは、負荷源となる流域人口・下水処理などの影響を強く受けるため、それらの状況が変動しやすい都市化地域の河川ではBODも変動しやすく、その予測は難しい。さらに、近年このBODに窒素の硝化に由来する酸素消費であるN-BOD(nitrogenous-BOD)が影響していることが指摘されている。N-BODは、有機物の分解に伴う酸素消費C-BODと原因が異なるため、その変動やBODへの影響も場所により異なると考えられる。そこで本研究では、近年都市化が進行しつつある広島県東広島市を流れる黒瀬川とその流域を対象に、BODに対する硝化作用の影響を明らかにするため、BODの経年変化と上流から下流への変化を、流域の下水処理状況と無機態窒素の動態、BODに対するN-BODの割合を元に解析した。その結果、BODは1990-2001年度の間、市街地部では下水道の普及により減少していたが、下水処理場の下流では、BODは改善傾向が認められなかった。これは、BODに占めるN-BODの割合が、市街地では5-14%と低かったが、下水処理場より下流では38-79%を占めており、下水処理場の処理水量の増加とその放流水に含まれるアンモニウム態窒素の硝化が影響しているものと考えられた。これらを元に、行政の把握している資料から、原単位法を用い、自然浄化と硝化作用を考慮した有機汚濁の時間的・空間的な変化を予測するBODの予測モデルを構築した。その際、下水処理場の下流のみ窒素の影響を考慮すると、BODの空間的・時間的変化を再現できた。


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