| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PB1-230

水鳥の湖岸植生に与える影響(1)―被食圧について―

*薮内喜人(滋賀県立大学大学院),浜端悦治(滋賀県立大学・環境)

琵琶湖はラムサール条約登録湿地であり、越冬のために多数の水鳥が飛来する。水草を採食する水鳥は採食や種子散布を通して湖岸植生にさまざまな影響を与えると思われる。採食圧については水草群落の種構成や現存量に影響を与えること、水草の定着が妨げられることが海外では報告されているが(Klaassen et al., 2008; Lauridsen and Klaassen, 2003)、国内の研究例はほとんど知られていない。琵琶湖やその周辺水域において、水鳥による沈水植物の越冬器官に対する採食圧が翌春の群落規模の縮小をもたらす可能性がある。そこで本研究では冬季における沈水植物の現存量と水鳥による摂食量を調べた。

滋賀県湖東地域を流れる愛知川下流域を調査地とした。この地域ではネジレモ、オオササエビモの純群落が分布し、塊茎タイプから成るクロモ群落が存在する。2007年10月から12月にかけて、この3種の純群落に水鳥の採食を防ぐネットを被せた区(ネット区)と摂食を許す区(非ネット区)を設置し、両水草の地上部と地下部の現存量、クロモについては塊茎密度もあわせて調査した。また、2008年はクロモ群落を対象として水深別(2008年9月28日時点で水深約30 cmと約60 cm)に同様の調査区を10月に設置し、一ヶ月後の塊茎密度を調べた。

水深とクロモの塊茎密度の関係を見ると、深水域で高密度であった。3種の水草を比較するとクロモ塊茎密度で減少が著しく、水草の採食が確かめられた。塊茎密度の減少を水深間で比較すると浅水域の方が非ネット区で減少率が高く、深水域では採食量は多いものの減少率が低いという結果となった。水深、餌密度の違いによる採餌効率による違いと考えられる。採食による水草越冬器官の減少が翌春の生長によって補償されるのかについてはさらなる調査が必要である。


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