| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PB1-303

開放方位の異なるスギ林林縁に移植したブナ稚樹の成長反応

*山田いずみ(新潟大・院・自然),紙谷智彦(新潟大・院・自然)

林縁の明瞭な光傾度は林縁からの距離によって高木の更新や成長に影響を与える。光傾度は、林縁からの距離だけでなく林冠構成種や林縁の開放方位の影響も強く受ける。スギの樹冠による被陰効果は大きく、ブナ稚樹の成長にもその効果は大きく反映されると考えられる。本研究は、開放方位の異なるスギ林林縁に移植したブナ稚樹の成長に及ぼす開放方位の影響を明らかにする。

調査地は新潟県十日町市のスギ人工林である。北・北東・南・南西それぞれに面する4つの林縁で、林縁から林内に向かっておよそ15m以内を調査区に設定した。苗畑で育苗された2年生のブナ稚樹を、2007年7月に調査区内の25ヵ所に20個体ずつ移植した。2008年9月に移植した全ての個体(3年生)を掘り取り、健全な個体の幹長、各器官の乾燥重量、葉面積を計測した。成長解析のために、幹長(cm)、T/R比(地上部重量/地下部重量)、SLW(葉の厚さの指数)の値を算出した。光傾度は、移植ヵ所において全天空写真を撮影し、ブナの成長期間の相対光合成有効光量子束密度(rPPFD)を算出した。

各方位のrPPFDを比較した結果、林縁からの距離が0〜3mではいずれも急激に低下したが、そのパターンは方位によって異なった。4m〜15mの林縁内部では、4〜10%の範囲に収束し、方位による有意な差は認められなかった。林縁内部における稚樹の成長を比較すると、開放方位が北東に移植された稚樹の幹長とT/R比は他の方位よりも高い傾向があった。また、南ではSLWが高く、北では低かった。これらのことから、林縁から4m以上内部に入ったスギ林内は、よく似た光環境ではあったものの、成長量や形質には差が生じることが明らかになった。


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