| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PB2-653

キンラン・ギンラン・ササバギンランの生活史のちがい

寺井学(大林組技術研究所)

コナラ二次林(約1.4ha)の林床に生育するキンラン,ギンラン,ササバギンランを11年間モニタリングした。2008年はキンラン356個体,ギンラン48個体,ササバギンラン212個体を確認した。個体数は3種とも増加傾向にある。分布位置から個体識別が可能であり,11年間を通じてキンランは465個体,ギンランは234個体,ササバギンランは324個体が確認された。個体を識別したモニタリングにより,生育期に地上部シュートが発生しない休眠現象が3種とも確認された。全ての個体について11年間の地上部発生回数と休眠回数をカウントし,発生回数と休眠回数を足し合わせたものを生存回数とした。これを個体数で除したものを生存期間として算出した。また休眠回数を生存回数で除して百分率で表したものを休眠率とした。11年間のモニタリングを通じて計算された生存期間は,キンラン7.33年,ギンラン2.01年,ササバギンラン4.19年であった。休眠率は3.6〜10.0%の範囲であった。

調査地において花梗を含まない平均的な草丈は,キンラン約27cm,ギンラン約8cm,ササバギンラン約16cmであった。調査地のコナラ二次林の林床は,20〜30cm程度のアズマネザサ等に覆われている。生存期間のちがいは,個体サイズに起因していると考えられた。一方,新規に発生する個体は,距離2,3mの近接した場所に複数個体が集団で発生する状況が確認された。その傾向は,ギンランで著しく,ササバギンランにもみられた。地上部の発生は,炭素源を得ている菌根の分布に依存していることが原因と考えられた。キンラン,ギンラン,ササバギンランの生活史のちがいは,菌根から炭素源を得る能力と,個体サイズに制約される自らの光合成能力により生じていると推測された。


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