| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PB2-663

開花遺伝子の生態学的役割

小林正樹(チューリヒ大・理),清水健太郎(チューリヒ大・理)

植物において多年生から一年生への進化は、複数の系統において何度も独立に生じたと考えられている。このような生活史の違いは、植物の繁殖に大きな影響を与えることが知られている一方で、その違いを生む遺伝的な基盤はよく知られていない。多年生植物と一年生植物を比較した際、開花の制御に関して大きな違いが両者にある。一年生植物は一生において一度だけ花を咲かせるのに対し、多年生植物は花を咲かせる時期と咲かせない時期を何度も繰り返し経験することができる。このことから我々は、開花の制御に関わる遺伝子の変化が生活史の違いを生むという仮説を立て、これについて検討した。

生活史の進化に関わる遺伝的背景を調べるためには、異なる生活史を持つ近縁な2種を比較し、研究することが有効であるが、シロイヌナズナとその近縁種は良い研究材料となりうる。モデル植物であるシロイヌナズナは、一年生植物で、多くの遺伝情報を利用することができる。一方、この最近縁種の一つであるハクサンハタザオは多年生である。我々はシロイヌナズナとハクサンハタザオにおいて遺伝子の発現を比較し、発現パターンの異なる開花関連遺伝子を見つけた。この遺伝子の調節領域をシロイヌナズナとハクサンハタザオにおいて比較したところ、シロイヌナズナにはハクサンハタザオでは見られない配列の挿入が確認された。現在我々は、多年生型の遺伝子発現を示すように形質転換した一年生のシロイヌナズナを用い、どのような表現型が現れるのかを確認している。


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