| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PB2-670

奥多摩のミズナラ、コナラ、クリの結実変動

森広信子(所属無)

−なぜ堅果類は変動係数が小さいのか?−

東京都奥多摩地域の二次林で16年間堅果落下量を記録した。対象はミズナラ、コナラ、クリの3種である。変動係数は、ミズナラとクリは途中間伐の影響で2年間結実のなかった1個体群を除くと、0.8−0.9前後となり、コナラは0.64とそれより小さかった。Herrera(1998)は木本144種296個体群の変動係数をまとめているが、その中で、この値は、大きいほうではなく、コナラの値は、かなり小さいほうである。Shibata(2002)も似た値になっており、少なくとも太平洋側地域のミズナラ、コナラの変動係数はこの程度で、風散布のシデ類のほうが、変動係数は高い。

Herrera(1998)は、風媒花の樹木で変動係数が高い傾向を見出しているが、すべてが風媒花であるコナラ属とマツ属を含めないほうが、風媒花樹木の変動係数は高くなる。この2属には、変動係数が小さくなるような、何らかの共通の性質があるのではないか?

コナラ属はすべてが動物の貯蔵行動を利用した種子散布を行い、マツ属にも同様な種子散布を、偶然的にではなく行う種が、多数存在する。このような散布を行うとき、単純な捕食者飽食戦略を採用すれば、散布者をも飽食させることになるが、このことは種子にとって利益になるだろうか?

コナラ属の種子は、多くの動物を餌として引き付けているが、散布に関るのは、小型哺乳類と鳥の一部であり、他は単なる消費者だ。豊作では、大型動物が多量に消費したとしても、その間に貯蔵する動物が十分に貯蔵分を入手できるだろう。堅果類は、不作で動物を減らす必要はなく、豊作時には、動物間の適度な競争を引き起こし、貯蔵に回る堅果を十分、余る程度に作り出すだけの量を生産する、とは考えられないだろうか。


日本生態学会