| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PB2-717

「衛星生態学」による山岳地流域圏生態系の機能評価

*村岡裕由(岐大・流域圏セ),吉野純(岐大・工),斎藤琢,永井信,石原光則,野田響,児島利治,玉川一郎,大塚俊之(岐大・流域圏セ),安田孝志(岐大・工)

『衛星生態学』とは,陸域生態系の生態プロセス研究・水文気象プロセス研究・衛星リモートセンシング観測を融合して,局所スケールでの詳細な生態系構造−機能関係の解明に基づいて広域の生態系機能の解明を可能とする研究アプローチである。岐阜大学21世紀COEプログラム『衛星生態学創生拠点』(平成16年度採択)では,森林生態系炭素循環研究のスーパーサイトである「高山サイト」を重点研究フィールドとして,植生構造のマルチスケールリモートセンシング,森林の生理生態学とCO2フラックスの統合的モデル解析など多角的な研究を統合的に推進し,(1)森林生態系のNEPを広範な時間スケールで規定する生態系生理学的要因の解明と,(2)葉群の生理生態学的特性のリモートセンシング手法開発を行い,さらに(3)高空間解像度(100mメッシュ)を持つ『衛星生態学モデル』の構築により,複雑地形での局所生態系の機能(NEPなど)とそれが流域圏としての生態系機能に果たす役割を解析できる研究プラットフォームを築いた。これらの研究では特に以下の点を重視した。(a)衛星データに含まれる雲ノイズの徹底的な除去,(b)衛星による植生フェノロジー観測の地上検証,(c)森林の優占樹種や密度,齢の違いによる炭素吸収と放出プロセスの環境依存性の違い,(d)フラックス観測による炭素・熱収支モデルの検証,(e)地形の複雑性に起因する太陽光入射量と地表面の熱収支が炭素循環プロセスに与える影響。今後の課題はモデル解析値の検証とともに,衛星リモートセンシングによる新たな植生観測手法を見出し,生態学研究へと適用することである。


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