| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PC1-384

巻貝の左右二型集団における形と頻度の時空変動

*中寺由美,浅見崇比呂(信州大・理),Somsak Panha, Chirasak Sutcharit (Chulalongkorn Univ.)

多くの動物は内臓の配置が左右非対称である。突然変異により内臓の配置は左右逆になることが確かめられているものの、内臓の配置が左右逆の動物が共存する(左右二型)集団は皆無に等しい。このdirectional asymmetryの一般性(反鏡像ルール)は、左右反転した鏡像種が比較的頻繁に進化した巻貝にもあてはまり、種ごとに右巻か左巻のどちらか一方に固定しているのが普通である。巻貝の交尾器は正中線にはないため、左右逆に発生した右型と左型では交尾器の位置が左右反転し、互いの交尾が物理的に難しい。その結果生じる正の頻度依存淘汰により、巻貝の反鏡像ルールは説明されてきた。しかし、巻貝の左右二型現象は稀ながらくり返し進化した。これまでの調査結果によれば、東南アジアのマレイマイマイ属では百万世代にわたり左右二型が共存してきた可能性が高い。既知の概念と事例によるかぎり、二型の共存機構として説明力の高いメカニズムは、負の頻度依存淘汰である。これまでに、左右二型間の選択的な異類交配の可能性が指摘されているが、維持機構の詳細には不明な点が多い。このマレイマイマイ属における左右二型の共存機構と進化機構を追究する目的で、長期生態調査(LTER, long term ecological research)を継続中である。これまでに得られた左右二型の殻の形と頻度の時空変動パターンの調査結果を報告し、負の頻度依存淘汰による左右二型維持の可能性について議論する。


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