| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PC1-388

奥日光におけるニホンジカが野ネズミ類に与える影響について

*大谷道生(宇都宮大学 大学院),小金沢正昭(宇都宮大学 農学部附属演習林)

ホンジカ(以下、シカ)の生息密度が高い環境下では、ササ類などが衰退し、裸地化や植生改変などの問題が生じている。野ネズミ類はササなどを食物や隠れ場所として利用しており、裸地化した場所などでは生息数が減ることが報告されている。奥日光地域もシカの生息密度が高い地域であり、野ネズミ類の減少が確認されている。現在、シカの個体数調整がなされている中で、シカの生息密度の減少が野ネズミ類の個体群動態にどう影響するのかを調べることは、野ネズミを含めた森林生態系の保全を考える上で重要である。奥日光地域は、2001年にシカの個体数を管理するために、戦場ヶ原周辺にシカ侵入防止柵(以下、柵)が設置され、シカの生息密度が低く抑えられている。本研究では柵設置によるシカ生息密度の低下が、野ネズミ類の個体数にどう影響するのか評価を行った。

ネズミの捕獲は2008年11月に10日間行った。捕獲では、49台のトラップを方形状に設置し、除去法を適用した。これらの結果を2001年に同地域で行われた結果と比較した。シカの生息密度の変化は1998〜2008年に本地域で行われたビームライトセンサス調査の結果から算出した。

本調査により採取された野ネズミ類は3種計38頭(内訳:ハタネズミ32頭、アカネズミ3頭、ヒメネズミ3頭)で、2001年に採取された野ネズミ類は1種計2頭(内訳:ハタネズミ2頭)であった。捕獲率(頭/台・日)は2008年の方が有意に高かった。10−11月のシカの生息密度は、1999年には66.7頭/km2であったが、2008年にはシカは確認されなかった。これらの結果からシカの生息密度が減少することによって、野ネズミ類の生息頭数は回復することが推察される。今後、野ネズミ類を保全していく上でも、柵などによるシカ密度を管理していくことが重要であると考えられる。


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