| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PC2-753

ノネコオスの配偶行動;求愛投資は一繁殖期内でどう変わるのか

*山本宇彦(九大・生態),粕谷英一(九大・生態)

オスが配偶行動を行う際に、オスの持っている資源(エネルギー量や求愛に費やせる時間など)に制約があることがオスの配偶行動に影響することは一般的である。そのような状況では、オスは資源価値の高いメス(子を多く残せるメスなど)に多くの資源を費やしたり、交尾相手をめぐるオス間の競争の強さに応じて資源分配を行っていることが考えられる。オスはメスの産子数やあるメスをめぐる競争相手の数などに応じて求愛への投資を変えることがすぐに考えられる。さらに、オスは競争相手の数のみならず、どのような競争相手と競争するのかによって求愛の仕方を変えていることも考えられる。

ノネコはオス、メスともに複数の異性と複数回交尾を行う。1匹の発情メスに対して複数のオスが求愛を行い、オスの求愛は数日にわたることもあるのでコスト(採餌に費やす時間が減るなど)が生じる。また、メスの発情は1月から3月ごろまでの期間に散発的に起こるが、メス1個体の発情は一繁殖期にほぼ1回数日間のみである。求愛では、一繁殖期内の別の日に発情した異なるメスをめぐって異なるオス同士の顔ぶれで求愛するという状況が生じる。このことから、オスは競争相手として誰が求愛しているかに応じて求愛の仕方を変えていることが考えられる。本研究では、調査区内の個体識別が可能な福岡県相島の個体群を用いて、オスが求愛の仕方をどのように変化させているかを検証するため、調査を行った。その結果、オスが行動圏内(95%MCP)での発情メスのうち求愛したメスの割合は平均で4割程度、多くても2/3程度にしかならず、またオス間での変異が大きいことがわかった。今回の発表では、さらにどのような競争相手が求愛しているかが、オスが求愛を行うかどうかに影響するのかについて検討する。


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