| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PC2-755

野外プレイバック実験をもちいたアブラゼミ雄の同種と他種の鳴き声に対する反応の解析

遠藤 暢(京大院・農・森林生態)

演者が昨年行った研究から、京都府下に生息する10種のセミのうち、同所的で出現時期が重なる種のあいだで、オスの鳴き声に含まれる周波数成分のピークは種特異的であり、ピーク周波数が近い種同士は、離れている種同士と比較すると、活動時間帯の重なりが小さい傾向が見られた。この結果は、ピーク周波数が近い種同士には、ピーク周波数が近いことによる干渉が生じている可能性を示唆しているものと考えられる。本研究では、ピーク周波数が近い別種が近傍で鳴くことで、オスの鳴き行動が変化するか否かをプレイバック実験で調べた。

2008年8月中旬から9月初旬にかけて、京都大学フィールド科学教育研究センター北白川試験地において、計約44時間、アブラゼミが鳴く時間帯である午後1時から日没の間に実験を行った。実験にはアブラゼミの雄を用い、プレイバックに用いる音として、録音された、同種アブラゼミの鳴き声、ピーク周波数が近い別種クマゼミの鳴き声、それら2つをパソコンソフトで1つに合成した音を用いた。実験に用いたアブラゼミ成虫は、現地で鳴いている個体を捕獲して用いた。捕獲アブラゼミ個体を、低木の梢に袋かけをした中に入れ、約1m離れたスピーカーから、3種類の実験音を聞かせ、観察個体の反応(鳴くvs鳴かない)及び音を聞かせてから鳴き始めるまでの時間を記録し、それぞれの音に対する反応に違いがあるかどうかを調べた。

アブラゼミ雄の、クマゼミの鳴き声、アブラゼミの鳴き声及び合成音に対するそれぞれの反応間に有意な差はみられなかった。これらの結果は、アブラゼミ雄は、ピーク周波数が近いクマゼミの鳴き声に対して、自種への反応と異なる特別な反応をしていないことを示していると考えられた。本結果から、アブラゼミとクマゼミの鳴く時間帯が重なっていない理由は、アブラゼミがクマゼミを避けようとしているからではなく、他の要因によるものと推測される。


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