| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PC2-759

異なる時間スケールの解析で明らかになるbeggingの機能

*北村亘, 藤田剛, 樋口広芳(東大・農・生物多様性)

親が子の世話を行うような動物では、子が親に餌などの資源をねだるbeggingと呼ばれる行動が知られている。Beggingは2つの機能があると考えられており、親は子のbeggingに反応して、1)巣内でどの雛に餌を与えるかを決定する、2)巣全体に運ぶ餌量を増加させる、と考えられている。一方で、動物の外界に対する反応は、時間スケールによって変化する可能性が様々な研究から示唆されてきた。しかし、動物の子が行うbeggingに対して複数の時間スケールを考慮した研究はこれまでに行われていない。そこで、本研究ではツバメを用いて、beggingの2つの機能がそれぞれどのような時間スケールで親に影響を与えているか調べることを目的とした。

千葉県富津市内の2ヶ所のツバメコロニーにおいて、繁殖期に給餌行動を撮影したビデオを解析した。ある給餌イベントを基点とした際に、過去に巣内の各雛が行ったbeggingの強さ・回数・長さを測定し、説明変数とした。このとき、様々な時間スケールでのbeggingの各指標に対して、親が、1)どの雛に餌を与えるか(分配の機能)、2)次に給餌に戻ってくるまでの時間はどのくらいか(給餌総量の機能)、を説明するモデルを作り、どの時間スケールが一番当てはまりがよいか、モデル選択を行った。

その結果、親が分配を決定する際には、直近のbeggingの激しさのみを利用しているモデルが選択されたが、給餌総量を決定する際には、過去のより長い時間スケールのbeggingを利用しているモデルが選択された。すなわち、ツバメの親はbeggingの2つの機能に対し異なる時間スケールで反応をしていることが示された。なぜこのような違いが生じるのか、適応的な意義を含めて考察したい。


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