| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) PC2-760

働かないアリどうしのケンカ −アミメアリ種内社会寄生者間の繁殖競争−

*森英章(自然研),千葉聡(東北大・生命科学),辻和希(琉球大・農)

ハチ・アリの社会においてはふつうワーカーは自己産卵し半数体の雄を生産できるが、多くの種でワーカー産卵は他個体からの監視行動(ポリシング)により抑制されている。すなわち、ワーカーが産んだ卵が食べられる、もしくは産卵した個体自体が排除されることもある。

一方で、形態学的な定義による「ワーカー」の産雌性単為生殖による共同繁殖社会を形成しているアミメアリ(Pristomyrmex punctatus)においては、巣内の齢の若いワーカーが単為生殖で2倍体の雌(ワーカー)を生産する。女王が欠損している本種においてワーカーの産卵に対するポリシングは観察されていなかった。

しかし、このアミメアリにおいて巣内の行動を詳細に観察すると、個体どうしの卵食行動が起きる場合があった。ある個体が産卵すると近隣の個体が近づき、その卵を奪って食べるというものである。この行動が起きる条件は限定的である。アミメアリには大型で単眼や倍化した卵巣を持つ社会寄生者がコロニー内に存在することがある。このタイプは育仔や採餌などの労働をせず、産卵ばかりを行うという形質をもち、これが遺伝する。上記の卵食行動は近隣の社会寄生者どうしでのみ起き、離れた位置に存在する社会寄生者どうしや、通常のワーカーに対しては起きない。コロニー内の社会寄生者の密度を変えた場合の卵食行動の頻度の比較実験からこの行動が密度依存的であることが考えられた。この実験と行動の詳細な解析から、社会寄生と卵食行動の関係について考察する。


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